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コラム第9回「介護保険の大枠を知っておこう」

コラム第9回「介護保険の大枠を知っておこう」

コラム第9回「介護保険の大枠を知っておこう」

これから始まる”介護”は、ほぼ全て介護保険の仕組み通りに動いていきます。介護保険を知ることで介護の全体像も把握できるでしょう。 できるだけ簡単に説明をしていきます。あまり身構えず、ぜひ楽しみながら読んでいきましょう。

2023-02-24公開 2024-09-19更新

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  • そもそも「保険」ってどんな仕組みだっけ?


    介護保険に限らず、皆さんもいくつか保険に加入されているかと思います。例えば医療保険や生命保険などですね。


    そういえば、なぜ保険に入るのでしょうか? 貯金があれば保険に入る必要はない……という訳ではありませんね。


    保険は、たまに起きる大きな事故・損失に備えて、みんなでお金をためて対処する仕組みです。例えば交通事故を起こしてしまったとき。相手に2億円支払うことになったら、なかなか払えません。かといって起こる確率が低い交通事故に備えて、2億円貯金しておくのも……。


    そこで保険の出番です。保険に加入したその瞬間から、事故が起きたときに2億円用意してくれます(そのかわり、保険料を毎月支払いますが)。


    保険をおさらいしたところで、次は介護保険を見ていきましょう。

  • 介護保険ってどんな保険?


    生命保険は誰かがご逝去なされたとき。医療保険は病気になったとき。そして介護保険は介護が必要になったときに備える保険です。


    いわゆる社会保険の1つです。介護保険はサラリーマン・自営業などの職業に関わらず、40歳になると必ず加入します。


    40歳になって介護保険に加入しても、利用するには審査を受けたりしなくてはなりません。みんなでためたお金が無駄遣いされないための審査です。これが2章でご説明した要介護認定です。


    名前だけでも難しい?「被保険者」の仕組み

    保険の契約書にしばしば「被保険者」という言葉が登場します。名前だけでもややこしいですね。保険をかけられている人、すなわち介護保険に加入された皆様のことを被保険者と呼びます。


    皆さんが40歳になると介護保険に加入し、被保険者になります。しかし、介護保険が使えるのは原則65歳以上の方です。加入しているのに保険が使えないなら、被保険者じゃないのでは? 鋭い疑問です。


    介護保険の被保険者には2種類あります。年齢によって分けられ、40〜65歳未満の方は「第2号被保険者」。65歳以上だと「第1号被保険者」になります。


    介護が必要になるのは、基本的に65歳以上の高齢者の方です。介護保険のメイン層なので「第1号」。


    一方、40〜65歳の方はバリバリの現役ですので、基本的には介護は必要ありません。しかし、ガンやパーキンソン病など一部のご病気をお持ちの方は、65歳にならずとも介護が必要な場合があります。例外的な対象ですので「第2号」です。


    ところで、第2章の「要介護認定を取っておこう」で、介護保険を使えるのは原則65歳以上(第1号被保険者)ですが、40〜65歳未満の方(第2号被保険者)も、特定疾病を持っていれば要介護認定を取得できる、という例外をご紹介しました。基本的には介護保険が必要ない40〜65歳の第2号被保険者が介護を使うには、特定疾病を持っていなければならないのです。成り立ちから覚えると、簡単ですね。

  • ”原則”1割の自己負担……原則って?


    介護保険のルール通りにサービスを使うと、皆様が負担するのは”原則”1割だけですみます。残りの9割は皆様が納めた介護保険料などから支払われる形です。


    例えば、自己負担が1割の方が、お家にヘルパーさんが来てくれる訪問介護を利用すると、こんな計算になります。


    <身体介護を25分受けたとき>

    1. 基本料金:約2,500円
    2. 自己負担額(1割):250円
    3. 国や自治体の負担:2,250円

    これならば、サービスを利用しやすくなりますね。


    さて、しつこく”原則”と使っていたのは、例外もあるためです。所得に応じて、2割負担や3割負担になるのです。


    負担が増えるのは、65歳以上になっても現役並みの所得がある方。下図は厚生労働省が公表している負担割合を見分けるフロー図です。こちらをもとに介護保険の負担割合を確認してみてください。

    介護保険負担割合フロー図

    引用:厚生労働省「給付と負担について」


    私たちが1割しか払わないなら、サービスが成り立たないのでは?

    これも鋭い疑問です。


    お金の流れを図にしてみました。

    介護保険お金の流れ

    引用:厚生労働省


    画像下側にいる、私たち被保険者が介護サービスを利用したとしましょう。原則1割の自己負担です。右上にいる介護サービス事業者には、料金のうち原則1割しか払いません。


    それでは介護サービス事業者が運営していけませんね。どうしているかというと、介護サービス事業者から、保険者(市町村など)に、残りの9割を請求しています。


    介護保険制度は、このようにお金が動いています。


    介護サービス費用も決めている

    では、介護サービス事業者が「このサービスは100万円で提供しよう!」と決めて、利用者からは1割の10万円を、国には90万円を……とはなりません。


    皆で納めた税金を出すのですから、お金には根拠が必要です。そこで国は、介護サービスごとに介護報酬(基本的なサービス料金)を定めました。サービスごとにかかる時間などを基に「単位」で定めています。


    例えば、先ほどの<身体介護を25分受けたとき>の例をもう一度。「単位」も加えて見てみましょう。


    <身体介護を25分受けたとき>

    1. 国が定める基本報酬(身体介護が20分未満、日中に行われた場合):250単位
    2. ↓だいたい10倍
    3. 基本料金:約2,500円
    4. 自己負担額(1割):250円
    5. 国や自治体の負担:2,250円

    1単位=10円を基本にしてサービス料金が決められます。ただし、地域や人件費による加算や、サービスの充実度合いによる加点が行われるので、ぴったり10倍ではありません。11.4倍などの数字もあります。概算で計算するなら、ざっくり10倍と覚えても問題ないでしょう。


    このように、国が主導で、介護サービス料金の相場が決められているのです。


    好きなだけ介護サービスを使えるわけではありません

    原則1割だからといって、好きなだけ利用できるわけではありません。使い放題だと、皆さんが納めた税金があっという間になくなってしまいますから。


    国や自治体に負担してもらえる金額には上限が設けられています。これは「介護給付の支給限度基準額」と呼ばれます。


    限度額は要介護度に応じて高くなります。下表の通りです。


    介護度

    給付限度額

    1割負担の場合

    要支援1

    50,320円

    5,032円

    要支援2

    105,310円

    10,531円

    要介護1

    167,650円

    16,765円

    要介護2

    197,050円

    19,705円

    要介護3

    270,480円

    27,048円

    要介護4

    309,380円

    30,938円

    要介護5

    362,170円

    362,17円


    要介護度に応じて上限が上がるのは、それだけ介護が必要になるからですね。とくに上がり幅が大きいのは要介護2〜3で、車椅子に乗るようになるのがこのくらいです。


    なお、上限を超えても介護サービスを利用する事は可能です。しかし、超過分は全額自己負担となります。


    介護保険適用のサービス

    ここまで、介護保険が適用されるサービスだけのお話をしてきました。介護保険が適用されるサービスは国が決めていて、表にするとこんなにたくさんあります。


    介護サービス一覧

    引用:厚生労働省「介護サービス一覧」


    ※2 平成27年4月改正の介護保険法により、介護予防訪問介護と介護予防通所介護は、地方自治体が主体となる「介護予防・日常生活支援総合事業」で同等のサービスを利用可能になりました。利用したい方は、市役所や地域包括支援センターに相談してみましょう。


    よく見ると、要介護度が要支援だと使えないサービスがありますね。要支援の方はまだそれほどサポートは必要ないので、介護度が高い人向けのサービスは使えないようになっています。要支援の方が使えるサービスを介護「予防」サービスと呼ぶこともあります。


    たくさんありますが、足りないこともあります。例えばペットのお散歩は介護保険適用外です。


    そこで、介護保険は適用されないけれど、介護を支えるサービスが作られています。介護保険適用外サービスなどと呼ばれます。介護保険は使えないので全額自己負担ではありますが、暮らしを支えてくれる便利なサービスですね。


    <介護保険適用外サービスの一例>

    1. 宅食(お家に料理済みご飯を届けてくれる)
    2. 訪問理容師
    3. 介護が必要でない方も含めた家事支援・代行
    4. など

    介護保険適用外サービスは国が値段を主導していません。事業者ごとにそれぞれ価格が決められています。

  • 3年に1回、ルールがちょっと変わります


    介護のルールを定める介護保険法は、3年ごとに見直しがされています。時代に合わせて必要なサービスを追加したり、物価の上昇などを反映したりするためです。


    改定の度に法律を読む必要はありません。ただ、新しい介護サービスが登場したかはチェックしておくと良いでしょう。


    先の一覧表のように、現在でもサービスはたくさんあります。しかし、税金のサービスですから「やれること・やれないこと」はキッチリ決められています。上のサービスだけだと生活しにくいこともご家庭によってはあるのです。そういうときは家族が頑張っているのが現状です。


    これに対応するため、国が新しい介護サービスを作ることがあります。皆が困っていることを解決するための新サービスですから、便利に利用できるかもしれません。


    次の改定は2024年です。地域包括支援センターやケアマネジャーさんに「改定で何か便利になった?」と聞いてみましょう。

  • おさらい:介護保険とは?



    1. 40歳になったら加入する
    2. 使えるのは原則65歳以上から
    3. 国が定めたサービスを、ルール通りに利用すると原則1割負担になる
    4. 使い放題ではなく、上限が決まっている

    以上が介護保険の大枠でした。全体像が見えてきましたね。


    しかし「朝晩のご飯をヘルパーさんに手伝ってもらいたいから、その辺のサービスに予約しよう!」とはならないのが介護保険の仕組みです。


    国が定めたサービスをルール通りに利用しなければ、原則1割負担にはなりません。このルールが「ケアプラン」です。そして、ケアプランを作る専門家が「ケアマネジャー」です。


    要介護認定を取得したら、次は「ケアマネジャー」と相談しながら「ケアプラン」を作っていきます。「ケアプラン」通りに介護保険サービスを使うと、原則1割負担になるのです。


    手続きが多くて面倒かもしれませんが、実は素晴らしいサービスです。ケアプランを作る費用にも介護保険が適用されて原則1割の自己負担です。誰でも介護のプロフェッショナルのサポートを受けながら介護サービスを利用できるわけです。自分が知らないサービスなども、身体状況にあわせて提案してくれますよ。


    次回はケアプランとケアマネジャーについて解説します。


    続きはこちら(コラム「介護の1から100まで」)

    第10回「ケアプランとケアマネジャー」


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森坪 真澄

「シニアホームの窓口」統括責任者、株式会社ファーストブリッジ 代表取締役

森坪 真澄

総合介護事業会社で有料老人ホーム、グループホームなどの利益改善責任者を担当したのち「シニアホームの窓口ナビ」を立ち上げ。介護現場での経験をもとに「老人ホーム選びのホンネ」を解説しています。

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